『GHOST』第2話が公開された。制作期間は2023年の12月から2024年2月までで、いつも通りネーム、下描き、ペン入れ・仕上げとひと月づつに分けての作業だった。
年末は忙しくてもそうでなくても気が沈みがちになるものだが、この12月はプライベートでバッドなことが2発あって結構落ち込んでいた。「うわ、ショックだよ。もうこんな状況無理だよ、消えてぇ〜」って感じで、まる1日何もせず、じっと布団で寝てるだけの日を過ごした(気温が下がった上に買い替えたばかりの布団がフカフカで気持ち良すぎるというのもある)。
そのまま眠り、夜中の3時くらいにふと目を覚ました。歯ぎしりによるダメージの蓄積を口の中に感じる。トイレを済ませ、寝汗でグショグショに濡れたシャツを着替えた。頭も風呂上がりくらい濡れていたので軽く水道で洗った。冷たい水が気持ちよくて頭が冴えた。汗でジクジクの枕は一瞬どうしようかためらったが、さっき頭を拭いたタオルを2つに折って枕の上に敷いてから頭をあずけた。加湿器を炊き過ぎなのかも知れない。
放尿と着替えと洗髪でクリアになった状態で横になっていると、どうしても2発のバッドな出来事について考えてしまい、眠るのを諦めた。かと言って何もしたくないので、コーヒーを淹れてボンヤリ飲んだ。自分の人生にはこの先楽しいことはもうあまりないのかも知れない、と思う。気づくと行き止まりに追い込まれていたような、今までの自分がずっと間違っていたような気分になった。
静けさが疎ましくなってイヤホンを耳にねじ込んだ。数年前からサブスクで音楽を聴くようになった。新しい曲も聴き放題だけれど、よく聴くのは古いものばかりだ。それも中学・高校時代に聴いていたものを「懐メロ」として聴いている。そんな自分を「おっさん丸出しでヤバい」と戒めているけれど、構わずNOFXの『Punk in Drublic』を再生した。高校の行き帰りの自転車で何度も聴いたアルバムだ。
当時が特別楽しかった訳ではないし、むしろ今と同じようにダサくてみじめで、何も考えてないバカだったけど、振り返ると懐かしい。とるに足らないことだけれど本人にとっては重大な喜びや失敗や後悔が思い返され、ちゃんと生きてたな、と思う。当時の自分に言葉をかけてやりたくなる。なんと言ってやればいいのか分からないが、何か肯定的な言葉を。
飲み終えたマグカップを持って流しに向かう。同じマグカップで水を汲んで口をゆすぐ。うっすらコーヒー色の水をシンクに吐き出した。歯に色素が沈着するのを予防するためにこの習慣を続けている。
中年が「懐メロ」を好むようになるのは、自分の人生の全てが間違っていたわけではなく、少なくても肯定したくなる一瞬があったと思いたくなるからなのかも知れない。
アルバムの8曲目でOi Oiコーラスが威勢のいい「The Brews」を聴きながら、そのまま手にしていたiPadでドミノピザのサイトを開き、夕食にめちゃくちゃデカいピザを注文した。店舗での受け取りを19時に指定して、その前に向かいのドラッグストアでビールをしこたま買おう。今夜はひとりでドカ食いだ。そう決めて布団に戻りテレビをつけ、Netflixで『キャロルの終末』(最高だった!)を一気観した。
こういう感じのLOWなテンションで正月休みに突入し、黙々と作業を続けて『GHOST』第2話を描き上げました。このブログは制作振り返り日誌のようなものを書くつもりでやってるのですが、「大変だった」とか「苦労した」とか毎回同じ事を書いてるので、今回は「どんな気分だったか」ということを書いてみたんですが、読み返すと基本的に自分はずっとこんなモードでやってますね。まあ、次回もまた3ヶ月後の予定ですんでヨロヨロの四苦!!