『GHOST』第1話 雑感

『GHOST』1話目制作について

久しぶりの連載作品だ。この作品の前は『THIS TOWN』と『LONG SLOW DISTANCE』という2作を描き下ろしで作った。ゴールを見据えて作画していく描き下ろしの方が気楽だなと思った。

この連載も一応ゴールまでのプロットは考えているが、各話ちゃんと面白く仕上げられるのかはやってみないとわからないことなので、不安がある。この第1話を描いている間も「2話目以降どうしよっかー」と常に考えていた。第1話がこうして公開された今は、その第2話の作成にかかりつつ、3話目以降に悩んでいる。

去年『LONG VACATION』の単行本が出たあと、担当の編集者さんと「次どうします?」と電話で話した。そこで提案されたアイデアから出発して、最終的にこの『GHOST』になったが、1年以上の時間がかかった。そう言うと「1年がかりの大作」という感じがするが、前述の描き下ろし作品にとりかかっていただけなので、めちゃくちゃ時間かけてて申し訳ない気もする。ただ振り返ってみると本人の体感ではほんの一瞬で、こうして人は簡単に歳をとるのだと思う。

タイトルは色々と考えて「GHOST」にした。常々プロフィールで「好きな作家はダニエル・クロウズ」と言っているので、読んでる人にはあえてこのタイトルにした気合いが分かってもらえるんじゃないだろうか。ちょうど映画『ゴースト・ワールド』の再上映もあって、不思議なタイミングを感じた。

今回描いていて一番楽しかったのは、冒頭のハンサム野村の舞台シーンだった。彼を芸人と設定した以上、ネタをやっているところをちゃんと描く必要があるなと思っていた。「芸人ってどうやってネタ書いてるんだろう」と前々から疑問だったのだが、自分でやってみたら難しさもあったが楽しかった(面白いかどうかは置いといて)。ハンサム野村は、アメリカンなスタンダップコメディを目指している設定なので、ネタを書くにあたってNetflixで色々動画を観たり、エイドリアン・トーミネの『Killing Joke』なんかを参考にした。関係ないけど、ああいう喋りのジョークを面白く翻訳するのってめちゃくちゃ難しそうだな、と思う。

彼のネタの中で「怪談で一番多く使われるイニシャル」については、実際に自分で調べた。家にある百物語形式の実話怪談の本を4冊(400話)に出てくるイニシャルを全部数えて、導き出した答えです。そういえば昔、大学で『源氏物語』を研究しているという教授が「物語の中に何個『源氏』という単語が使われているか、そういうのを数えるのが研究だ』と言っていて、その行為に何の意味があるんだろう、と漠然に思ったことがあったが、20年以上経って同じようなことをやってる自分がバカバカしくてよかった。

『GHOST』は全7話を予定していて、COMIC MeDuにて3ヶ月に1本のスケジュールで連載していくので、これから約1年半になりますが、最後までゆっくり付き合っていただけたらと思います。

『GHOST』第1話 雑感

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