
この作品は2020年の正月から制作にとりかかったように思う。「思う」と弱腰なのはもうすでに記憶が曖昧だからだ。本でも映画でも2000年代の作品をいまだに「つい最近のモノ」と捉えてしまうような時間感覚で生きているので、年月を把握するネジを2〜3個落としてしまってるんですね。たぶん。
去年の暮れごろに、単行本『LOW LIFE』に向けて原稿の直しや印刷用のデータ作成をしていたころに、「次はどうしますか?」と担当の方から連絡があった。先方からの要望は特になかったが、自分から「あ、じゃあ次は続き物で」と言ってお願いした。
「LONG VACATION」の準備は割と時間をかけたと思う。結末までの道筋を決めずに描き始めるのは不安なので、実際の制作に取り掛かる前に、簡単なセリフとト書きでストーリーを作った。多分2月いっぱいまでかかったと思う。
それからそのストーリーを要約してプロットを書き、担当に送った。それから何度かやりとりを重ね、修正しながら1話目のネームが出来上がったのが4月の中頃だったと思う。「続きモノ」の第1話として、どうやったら興味を引けるのかがよくわからず苦労した。このころからはコロナの不安が世間的にも強くなって、家にいることが多くなった。作品制作に当てる時間が増えて助かったのだけれど、ニュースサイトばかりを追って作業にあまり手がつかなかったりと、メンタル面では不安定な日々を過ごした。
5月は大きな連休もあったし、コロナで仕事が減って会社も休みやすくなっていたので、制作時間が十分にとれた。夜中まで追い込まれて作業をしたりすることもなく、下描きからペン入れまで1ヶ月ほどで終わらせたと思う。
そのあとベタやトーン、セリフの作業にかかった。締め切りは6月中旬だったので余裕を見ていたのだが、仕上げ作業で思いのほか悩んでしまい、最後は滑り込みになった。何度も言っているが、長い作業の末にマンガの原稿を完成させても達成感はあまりなく、「変なミスしてないか」「面白くないんじゃないか」などいつも気を揉んでばかりいる。
内容については作品を読んでもらうとして、いくつか元ネタの紹介をしておきたい。ラストで主人公が観る映画は「I HATE YOU, MORE THAN I LOVE ME」というタイトルだが、これはアメリカのパンクバンドNOFXがこのコロナ期に発表した新曲「I Love You More Than I Hate Me」からとった。ちょうどネームを作成してるころにMVが公開され、ロマンチックなフレーズだと思い、いただいた。
あと主人公が唐揚げを揚げているコマで、片足をもう片方の膝に乗せて立っているシーンにも元ネタがある。楽しく料理をしているポーズとして考えたのだけれど、描きながらこれは絶対なにか元ネタがある、と記憶をたぐったら望月峯太郎の「ちいさこべえ」に、リツが正座でしびれた足をさすりながら台所に立つシーンに同じようなポーズがあった。多分これだろうと思うが、もしくはBOOWYのアルバム「INSTANT LOVE」の裏ジャケに載ってる布袋のポーズかもしれない。どちらも画像を貼るのは億劫なので、興味がある方は各自検索してください。
第2話は9月下旬公開に向けて作業を進めています。コロナも続くし、暑い季節になるけれど、みなさんどうか体に気をつけて、気長に待っててくれると信じてます。勝手に。
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LONG VACATION 第1話「ストレス」
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