SPRING HAS COME (1)

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MeDuにてマンガ「SPRING HAS COME(1)」が公開されました。以前の「ビールを買いに」の主人公のその後の話で、彼が大学を卒業して何もしないまま時が流れ、季節は一巡して、また春が来る、という感じです。真夏にこんなタイトルで公開かよ、とも思いますが、この1周回った感じが欲しくてこのタイトルにしました。(1)ということは、もちろん(2)に続きます。次でラストになります。乞うご期待。

内容については読んでいただければと思いますが、細かい部分の解説を少し。今回はグラフィックデザインの職業訓練を受ける話になっていて、そのデザインを絵で見せる必要がありました。またその意匠は単一ではなく、各キャラクターごとのテイストや意味を持たせ、かつ説得力のあるものにしなければなりませんでした。それらを一つひとつ自分の中から捻り出すと、どうしても同じ様なものになってしまう。どうしたものかと考え、元ネタを用意することにしました。以下はその解説です。

 
眼鏡の女性(須永英子)のデザイン

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彼女が家でひっそりと作り続け、講師に見せたデザインの元ネタは「STOMACHACHE.」というイラストレーター(ユニット)の「PAPER AND PEN, STORY」という作品集です。真似しようとしてもできない唯一無二な存在感と、ほんのり漂う不気味さ。仕事スレしていないインディーズな感じがこのキャラクターにぴったりだと思い参考にしました。具体的には「顔を塗りつぶされた人物」「添えられた少し不思議な英文」「DIY・スケート・zineなアメリカっぽさ」を真似ています。この本をどこで購入したのか覚えていませんが、見返す度にやられます。

 
講師の展示会などでの作品

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この講師はデザインの仕事をプロとしてこなしている人です。なので実際の広告として成立する完成度(とハッタリ)がないとダメだと思いました。そこで自分が勤める会社の資料棚にある「ADC年鑑」を参考にしました。ADCとは「東京アートディレクターズクラブ」のことで、いわゆる日本のグラフィックデザインのトップランカー達の会員制組織です。その組織が毎年「この広告が良かった」というものを集めたのが「ADC年鑑」です。特に90年代の年鑑数冊に目を通し、絵になりそうなもの(自分がマンガに描けそうなもの)をいくつかメモし、参考にしました。いくつもの広告を見ていると、複雑でニュアンス的なものが多く、シンプルな絵で再現できそうなものは意外と少なかったように思います。

 
事務所のソファーの柄

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これも自分の憧れのライター、マイク・ジャイアント(イラスト・タトゥー・グラフィティ)の絵柄を真似ています。ソファの柄はこれから起こることを予感させる、ちょっとエロくてケバいものにしたかったので、そういうモチーフを考えたのですが、自分は繊細で耽美な絵は描けないので、じゃあこの人の絵だろ、と割とそのまま描いています。

 
コンドームの箱

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独身であるどころか女っ気ゼロの中年童貞の自分の手元には、コンドームの資料なんてこれしかありませんでした。「キラー・コンドーム」という映画のコンドーム型パンフレットです。映画の物語はあまり覚えていませんが、牙の生えたコンドームが男のアソコを襲う、という内容でそのクリーチャーのデザインはH.R.ギーガが行っています。映画のB級感もあって、オチに間抜けさが出たと思います。
今回に限らず、マンガを描く時は大なり小なり元ネタやイメージソースがあり、それらを全て開示することはしていません(物語の解釈が狭まると思うから)。ですが今回は、意図的に参考物を用意して描いたものを僕の100%オリジナルと解釈されると語弊があるので、元ネタの紹介をしました。

それでは、次回「SPRING HAS COME(2)」もお楽しみに!

 

 

 

SPRING HAS COME (1)