LONG VACATION 制作記2

LONG VACATION エピソード2「ビーチ」公開になりました。制作にあたった期間は7〜9月で、前回に続き連休が多くて助かった。

この2話目で主人公は休暇をとり、「小匙島」という島にバカンスに出かける。この島は架空の島で、名前のイメージは「小豆島」からとった。そういうのもあって、実際の小豆島まで雰囲気を見に行った方がいいんじゃないかと思っていた。取材したものそのまま作品に使うわけじゃないけど、浜の色とか、生えてる植物とか、建物の形とかを見でおけば、作画もラクになるだろうし。

ただまあ、行きませんでしたね。
コロナがなくても行ってなかったと思う。めんどくさいから。

作品の舞台や風景は、具体的な場所を描くより、記憶や想像をベースに「ない風景」を描くほうが楽しい。ディティールは写真を見たり、資料を探して参考にするけど、基本的にマンガは「ウソ」でいいと思っている。

例えば今回、新幹線のシーンは「ウソ」をついている。新幹線の窓はあんなに大きくないし、1列シートの車両も見たことがない(ファーストクラスみたいなシートがあるのかも知れませんが)。ただ「流れる車窓の景色」を描くなら、あれくらい広い窓の方が見栄えがいいいし、座席の前後関係を見せるなら「隣の座席」が邪魔になる。そういう都合を優先するのは、マンガ的なデフォルメだと思う。

フェリーもいくつかの記憶を混ぜ合わせて描いた。船内にうどん屋があるのは、鹿児島で桜島に渡るときに乗ったフェリーで食べた思い出からだ。味は思い出せないが、しみじみと旅情を感じた記憶がある。

最後に向かう遊園地「スペースランド」は大阪のエキスポランドのイメージ。今は別の商業施設になっているが、家が近くにあったので幼い頃から何度も訪れていて、記憶が濃い。廃業後の打ち捨てられた様子も写真に撮っていたので、それらを見ながら描いた。

絵に関しては、前回からアミの部分(中間色)をカラーにしている。これは自分のルーツであるダニエル・クロウズ「ゴーズトワールド」のマネ。印刷だと2色刷りはコストが高くつくが、Webならインクの問題はないのでやってみていいですか、と編集者に相談したらOKが出た。「Web掲載ってことの可能性を追求したい」みたいなプレゼンが効いたと思う。

作業としてはグレーで塗っていたのをカラーでやるだけでなので何の負担もないし、憧れの2色マンガが実現できたので、個人的にはすごく嬉しい。これはWebならではの強みだと思う。

ただ単行本にするときは、全部グレーに置き換える必要があるけど、それはまた別の話で。
印刷、Webの2バージョンを楽しんでいただけたらと思っています。
リンク〈LONG VACATION 第2話〉

LONG VACATION 3話目は2020年末ごろ発表を目指して作業を進めていますので、気長にお待ちくださいヨー。

LONG VACATION 制作記2

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