HIKING

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MeDu掲載第4弾、「HIKING」公開されました。定年後、なんにもすることがないおじさんがハイキングのツアーに参加する、という短編です。ぜひお読みください!(リンク)

朝、大阪駅の周辺に行くと、これからどこかに出かけるツアーの集団をよく見かける。若い人たちのスノボ行きシャトルバスだったりもするが、大抵はおばさんたちの日帰りツアーっぽいやつ。一様にモンベルなんかのウエアに、帽子、リュック、登山靴で身を固めている。何人かずつの輪になって楽しげにおしゃべりしているのはおばさん達で、そこから2、3歩離れたところでおじさんが数人、所在なさげに立っている。一人で参加したのか、もしくはおばさん達の誰かのダンナで、夫婦で申し込んだのか分からないが、つまらなそうに集まっている。居心地の悪さを消すためか「どうでもいいけど早くしてくんねーかなー」というふうの横柄な態度で自尊心を保とうとしている感じが、はたから見ていて面白い。

それでも腰の低いおじさんは、おばさん連中と仲良く雑談をする。「昨日の夜2時に目が覚めちゃって、全然寝てない」とか「お元気ですね、僕の荷物も担いでもらおうかしら」とか言って笑いあっている。そんなおじさんを、集合場所の隅にわだかまっている方のおじさん達は快く思いません。「なんだアイツ、男のくせにヘラヘラと」と軽蔑の眼差しを送る。そしていまいましげにタバコを吸うと、別のぼっちおじさんに「俺ぁ最近タバコ辞めたんだから、クセエな」と言わんばかりに煙たがられている。

まあ、全て想像だけれど、通勤途中にそういう集団を見かける度に「いいな」と反応してしまう。それは多分そこに自分を見るからだろう。

おばさんは大抵どこでも(うっとうしいくらいに)元気で楽しげだ。そしておじさんは大抵、陰気でつまらなそうにしている。これは自分の両親にしてもそうで、色々趣味を持って出かける母と、近所をちょろちょろ自転車で流すだけの父。男女の差なのかもしれないが、実家に帰るたびに部屋でひたすらイラストロジックという本を塗りつぶす父に「楽しい?」と聞いたら、即「ぜんぜん」という言葉が返ってきた。自分もいずれ歳をとればそうなるんだろうか、というか既に今でも休日はビールを飲んで部屋でだらだらするだけだしな、と思うとそれ以上話を続けられなかった。

そういうところが、この作品の出発点になっていると思います。

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